ヴェリタス〜輸入直販ワイン専門店


その26


84ムルソーを開けたところ、キャップシールに黒々としたカビが ビシッと生えていました。

客観的に眺めると、なるほど、これは恐れるに足る概観。 抜き上げると、カビは上部5mmあたりまでコルクの外から 囲むように生えています。

液に接触する面にはワインが染みて、それが乾くとキラキラした 酒石酸の結晶がついていました。



ろ過をしていないワインなので、成分がそのまま残っていて、
20年分を生き抜くために消費された色素やタンニン、
その他成分が結合して黒い澱のカケラが沢山沈んでいました。

グラスに注ぐと、色素を使いながら延命してきた老将だけ あって、もう色はアンバー、飴色の玉ねぎ色です。

香は閉じてブドウの果実はずっと奥の方に閉じ込められています。 十分に熟成し、ラム酒、チョコ、なめし革、麝香、紅茶など ひとつに混ざり艶やかなよい熟成をしています。 開けて急に空気に触れさせたので、酸味と渋みなど収斂味が ドッと前に出て、ワインが荒々しく怒っています。

こんな時、「うわっ、まず、なにこれ!?死んでるの?」
あ〜あ、と大損した気分になるでしょう。

しかし、これからが本番なのがブルゴーニュの古酒なのです。

・酸味が恐ろしいくらいあり、
          まだまだへたる気配なく元気
・熟成の香がちゃんとある

こんな時は、恐れるに足りず、ただ待つだけで大抵おいしくなります。 朝11時に開けたので、こんな調子では、これは夜10時くらい待てば、 そこそこうまみと香とまろやかさがグッ〜〜〜ッと出てきて、 素晴らしい姿を見せるはずです。

そしてパニエに寝かして、中間の夕方5時、
グラスに注いで一度味見してみますと、
「うまっ!酸っぱさもまだまだ元気、でもうまっ!」 と11時に予想したとおり、少しづつまるみと、
果実味と熟成香が混ざり、 うまみを前に押し出しつつ、美しく変身をしようとしていました。

82ムルソーは豊穣の年、ブドウがうまく熟したので、 開けてもすぐ素直なうまみが楽しめましたが、84は熟し方が 複雑であったと見え、なかなか根性曲がりというか、気難しい性格です。
ノンフィルターの古酒は色もくぐもり、見た目も、透明なワインの外観に慣れた人には
かなり抵抗があります。

一、最初のキャップシールを開けた瞬間から、カビでドギモを抜かれ、
ニ、次は渋さと酸味のハンマーパンチを見舞われ、
三、色をつくづく眺めて、「これは腐敗しているのか?」不安がいっぱい。
四、そして、開く姿を知らないまま、こんなワインダメだ。

と捨ててしまう事になると、古酒本来の姿を発見する幸せとは縁遠くなります。

古酒とは誠にやっかいな、覚悟のいる気難しいワインです。 そしてまた、一、ニ、三、四の大ハードルを越える勇気、忍耐、 知識と経験を積む必要性がある競技であり、この手強さこそが 古酒の醍醐味ともいえるのかも知れません。

追伸:84ムルソーは、12月25日11:00から12月27日11:00の48時間で うま味と香りがしっかり出ました。しぶとさに驚愕のワインでした。


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