あの、三ツ星レストラン『ラムロワーズ』ごほうも〜ん。
飲み頃83オー・ブリオン体験記
ボーヌの町から車で南のシャニイへ走ること30分ほど。
ジャック・ラムロワーズが史上最年少で3ツ星シェフになってから20年近く、
星を保ち続けてきた、奇跡の食の殿堂ラムロワーズがある。
夜8時、出迎えてくれたスタッフのやわらかで温かみのある笑顔。
「ご遠方からおいでくださってお疲れでしょう?
乗り物のアクセスはうまくいきましたか?本当によくおいでくださいました。」
言いながらの表情とねぎらい、そしてきびきびした動きは、う〜ん一流だよね。
しかも心がこもっている。 |
まだまだ冷え込む3月の外の寒さと暗さと静けさ。
中はまるで別世界。
やわらかに壁を照らす光彩、シンプルで落ち着きのある上品な家具の色合い。
さざめく賑わい。集う人たちの喜びに満ちた表情だけで、
すでにここのお料理がどれだけおいしいのか予想がつくというもの。
うわっ〜期待がどんどん高まるやないの。
うん??なんだか煙い。ややっ!なんたること。
茶髪のタンクトップのお姉ちゃん3人組が口から鼻から耳から
モクモクのタバコの猛煙を上げているではないか。
(よく見たら一人は鼻輪をしたお兄ちゃんだった。)
明らかにいいかっこする為だけにラムロワーズに来た連中だ。
早速席を替えてもらう。15分後、その3人組の周りはすべて空席になった。
ソムちゃんが分厚いワインリストを抱えてやってきた。
ブルゴーニュ入りしてはや4日、毎日クロドヴージョなどなど試飲地獄で、
もうどんなにおいしいワインでもブルゴーニュを頼む気力がなくなっていた。
30分さらに考えて、指差したワインを
「え?どうして?ブルゴーニュじゃないの??」ソムちゃんに聞き返された。
「もうまる4日ずっとブルゴーニュだから勘弁してください。」
ウィウィ、ダコ〜。 |
頷きながら奥に消え、もって来てくれたのが、「83年オーブリオン」。
毎日100本以上試飲し続けると体がきつい。
そんなわたしの心身をこの飲み頃になったボルドー一のジェントルメン
オーブリオンがきっと癒してくれるはず。
パーカーにぼろくそ書かれてたけどエーねん。
Pちゃんはバリバリ親父の元気なのしか誉めないから、
きっと繊細においしい状態なはず。
手馴れた様子で注がれた赤い液体に鼻をつける。
ダビドフの葉巻、燻したようなアールグレイの紅茶のような。
この熟成したオーブリオンにしか出ないなんとも複雑な香り。
熟れたオレンジやプルーンなどのフルーツの甘い香りが後ろにくっついている。
飲み頃に入っているが、すごく元気だ。口に含む。
酸もタンニンもとってもいきいきとして、うまみはもっと時間が経ってから、
前に躍り出ようとひそかにチャンスをねらっているのが分る。
アルコールとすべてがうまく溶け合ってすてきな状態だ。
でももっとおいしくきっとなる。
開けたての酸と渋みの憤りが取れた時、水もしたたる美男に大変身する。
それまで、あと6時間だ。
ラムロワーズのシェフたち。ごっちそうさま〜♪ |
おいしいオーブリオンを飲み飲み、次々運ばれてくるご馳走。う〜ん、至福。
もう食べられないってくらい、たらふく食べてぐっすり眠ったら、
次の朝、またしてもたらふく朝ごはんを食べたわたしって、どんな人?
ちなみにその夜いただいたお料理の名は
フォアグラのソテー エシャロットのコンポートとかぶのキャラメリゼ
ギュウフィレ肉バター風味赤ワインソース、
エシャロットとジャガイモの座布団仕立て
骨つき子羊のヒレ肉フレッシュハーブ風味焼き
ロビーで待ち合わせをしている外からの一般来客にさえ、
おいしいコーヒーをふるまうホスピタリティ。
よく、「家にいるようなくつろぎの空間」なんていうけれど、
その心配りの細やかさは驚かされるほど。
三ツ星レストランは数あれど、これほど行き届いたサーヴィスを受けることは
まれでしょう。
天下のラムロワーズ、サーヴィスも味もさすがはさすがの三ツ星。
まだまだこの調子でがんばって欲しいもの。 |
それにしてもオーブリオン、まだまだ十分な力強さと端整な面持ちを維持し、
5大シャトーの面目躍如、大物の貫禄じゅうぶんであった。
ブルゴーニュワインに疲れたら、年代もののボルドーワイン、
優しくしっとりいいもんだ。
83年は一度はお試しのお値打ち品でしょう。
Writing by : 店長辻(Dr.チュン)
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