ボルトを適切な力で締められるため、配管工事や機器組み立てに重宝な工具であるトルクレンチ。自動車や自転車のメンテナンスにも使われ、デジタル型やプリセット型など、形状や構造によって値段や使い方は異なります。
KTCやエマーソンといったメーカーが人気ですが、自分の求める用途にぴったりのトルクレンチはどれなのか、分からない方もいるでしょう。この記事では、トルクレンチの種類や選び方、おすすめ人気商品をご紹介いたします。
目次この記事でおすすめする商品
トルクレンチとは
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トルクレンチは六角ボルトを締めたり、締めた力を測定したりするために使う工具です。レンチというと一般的に金属の棒状で、片方または両方に開口部がついた単純な構造ですが、トルクレンチは内部にコイルスプリングが入っているなど複雑な構造をしています。
トルクとは棒状の物をねじる、つまり締める力のことです。トルクレンチはこのトルクの大きさを設定できるので、一定の強さでボルトを締められます。一方で、精密に締める目的に特化しているのでボルトを緩める用途には向いていません。
「ボルトを締めるだけなら普通のレンチでもいいのでは」と思う方もいるでしょう。しかし、ボルトには適切に締めるためのトルク値が、N・m(ニュートン・メートル)という単位で設定されています。
トルク値はボルトの用途によって異なり、例えばタイヤ一つとっても乗用車なら85~110N・m程度、重量のある大型トラックでは400~600N・mと様々です。
工業機械や自動車のタイヤは、ボルトの締め付けが緩ければ大事故につながってしまいます。きつく締め付けすぎてもボルトや機器側の破断に繋がってしまうため良くありません。そのため、ボルトのトルク値に対応できるトルクレンチを選ぶ必要があります。
トルクレンチの選び方
トルクレンチは大きくシグナル式と直読式の2種類に分けられます。この2つの主な違いについて以下で詳しく解説していきますので、自分の目的に適うトルクレンチはどれかを考えてみましょう。
シグナル式から選ぶ
シグナル式のトルクレンチは、最初にトルクを設定してボルトを締めていくタイプです。設定トルク値に達したらカチッと音が鳴り、腕にもショックが伝わるので、設定値に達したことが分かるでしょう。ただし、設定値に達したことを知ってから力を抜くまで少しタイムラグがあるため、僅かにですが締めすぎになる可能性があります。
シグナル式は、トルクレンチ本体でトルク設定できるかどうかで2種類に分かれます。トルク設定機能がついたものがプリセット形、ついていないのが単能形です。
乗用車のホイールナットに最適な、プリセット形
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プリセット形はトルクレンチの中でも最も普及していて、本体にトルク変更のための機構がついています。設定可能範囲なら自由にトルクを決められるため、複数のトルクが要求される作業に便利です。
プリセット形は乗用車のタイヤ交換でよく用いられます。理由は2つあり、1つ目は自動車のメーカーや車種によってホイールナットのトルク値が異なるためです。たとえば軽自動車は85N・m程度、その他国産車は90~110N・mとかなり幅があります。自動車の乗り換えごとにトルクレンチも買い替えるのは面倒ですから、1本で対応できるプリセット形が最適です。
2つ目は、トルクレンチは設定可能範囲の上限にトルク値が近づくほど、より大きな力が求められるためです。もしトルク値110N・mのボルトを締めたい場合、設定範囲が40~110N・mのトルクレンチでも締めることはできますが、上限ギリギリなので成人男性でもかなりの力が必要です。プリセット形を選ぶ際には、普段使う設定よりも上限に余裕のあった方が扱いやすいでしょう。
配管工事に使われることが多い、単能形
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単能形のトルクレンチは、本体にトルク値設定のための機構がありません。最初から一定のトルクで決まっているので、目的に合わせたトルクの商品を購入することになります。トルクを改めて設定するためには、注文時にメーカー側へ要望を出すか、トルクレンチテスターと呼ばれる機器が必要です。
最初の設定後にトルクを変更する必要がないケースで重宝し、とくに空調や水道などの配管作業で用いられます。また、単能形はプリセット形よりも本体構造が単純なので、1本あたりの価格は安めです。
直読式から選ぶ
直読式トルクレンチは、本体にトルク値を読み取るための目盛り盤や液晶画面がついているタイプです。基本的には最初にトルク値を設定せず、目盛り盤を見ながら調整できるので、精密にボルトを締められます。現在のトルク値が一目で分かるので、シグナル式のような僅かに締め付けすぎるケースも防げるでしょう。
直読式はトルク値の表示形式によって分類できます。アナログな目盛りと針の振れによって計測するプレート・ダイヤル形と、センサーでトルクを測定して液晶画面に表示してくれるデジタル形です。
検査の際に使われることの多い、プレート・ダイヤル形
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プレート・ダイヤル形は、グリップのやや上にトルク値を示す目盛り盤と指針が付いています。目盛り盤が横長であればプレート形、時計盤のように円型ならダイヤル形です。プレート形は、トルクレンチ先端部についている指針が目盛り盤上部まで伸びています。ソケット部をボルトに差し込んで力をかけていくと指針がたわみ、現在のトルク値が測定可能です。
ダイヤル形は円型の目盛り盤がついていて、大体の製品に2本の針がついています。指針である1本は現在のトルクに合わせて動き、置針と呼ばれるもう1本は最大トルクの数字で止まります。最大トルクを見ながら調整がしやすい点が魅力でしょう。
プレート・ダイヤル形はシグナル式のトルクレンチよりパーツは多いものの、内部の構造はほとんど同じで、比較的安価に販売されています。ただし、精密な測定をするためには操作に慣れが必要なので、熟練者向きです。
測定値のデータを集める時にも便利な、デジタル形
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デジタル形は、トルクレンチにかける力をセンサーで感知し、電気信号にして液晶画面に表示します。また多くの製品で、設定したトルク値になると音や光によって教えてくれる、数分使用しなければ自動で電源が切れるなどの各種機能がついていて便利です。本体に測定したデータを記録して、USBや無線でパソコンなどの端末に送信可能なタイプもあります。
デジタル形のメリットは、精密なトルク測定を簡単に行える点です。プレート形のように熟練の経験を求められることがなく、操作方法さえ理解すれば素人でも最適なトルクでボルトを締められます。半面で、機能的に優れているために価格は高めです。
トルクレンチのおすすめ人気ランキング
トルクレンチには以上のように4種類があり、どれも一長一短の特徴をもっています。使い道が広いほど扱いも難しく感じてしまい、自分にピッタリ合う物はどれか、判断がつかない方もいるでしょう。
ここからは実際の商品をランキング形式で見ていきます。4つのタイプからそれぞれピックアップして、どのような用途に向いているかも説明していますので、ぜひ参考にしてください。
1位 EM-29 エマーソン トルクレンチ ニューレイトン 103N・mプリセットタイプ 12.7mm角
サイズ:全長500mm 差し込み角12.7mm
重量:2,300g(セット含む)
トルク測定範囲(N・m):40~200
セット内容:トル本体クレンチ、14/17/19/24mmソケット 差込角:12.7mm 21mm薄口ロングソケット/エクステンションバー
付属品が豊富で車体整備に持っておきたいツールセット
5種類のソケットがセットになったトルクレンチセットです。十分なトルク範囲を持っているので、自動車のお手入れがはかどるでしょう。10N・m単位となっている主目盛りの数字に、副目盛りの0~9までの値を足せばよいので、細かいトルク設定も一目で行えます。
デザイン性を求めたタイヤホイールだと、ボルトが穴に埋まっている形状になっているケースがあります。この製品についているロングソケットを使えば、普通のトルクレンチでは届かないボルトもしっかり締めることが可能です。薄口なので、ホイール側を傷つける心配も減らしてくれます。
付属のソケットは面接触によりボルトをしっかり捉えるので、トルクによる負荷が大きくてもボルトの角をなめないようになっています。付属ハードケースで持ち運んで、ボルトごとに対応ソケットを切り替えて使いましょう。
2位 マルチクラフト(MULTICRAFT) トルクレンチセット MTR-6
サイズ:全長465mm 差し込み角12.7mm
重量:1,350g
トルク測定範囲(N・m):28~210
セット内容:トルクレンチ本体、ショートソケット(14mm・17mm)、ロングソケット(19mm・21mm)、エクステンションバー125mm
肉薄なロングソケットが2本入りだからホイール交換がしやすい
コンパクトなケースに4本のソケットとエクステンションバーが入っています。収納ケースは長さ49・幅8・高さ7cmで、ラゲッジスペースの少ない車内でも問題なく置いておけるでしょう。
ソケットのサイズはどれも乗用車の整備によく使うものが揃っているので、普通のレンチなら面倒だった作業も、このトルクレンチ1本で手軽に行えます。とくに2つのロングソケットは外形が薄くなっていて、ナットとの隙間が狭いアルミホイールにもスッと差し込むことができて傷つけません。
トルク範囲は28~210N・mとかなり広く、上限が高いので作業時に必要な力を低減してくれます。ラチェット機構は回転方向の切り替えができるので、緊急時の緩めにも対応可能です。
3位 E-Value プレセット型トルクレンチ 差込角 12.7mm (1/2インチ) ETR4-200
サイズ:全長458mm 差し込み角12.7mm
重量:2,330g(セット含む)
トルク測定範囲(N・m):0~200
セット内容5mm:トルクレンチ本体、専用ハードケース・ディープソケット(17・19・21mm)・エクステンションバー125mm
トルク調整がやりやすい初心者向けの一本
使い勝手のよいプレセット形トルクレンチです。所定のトルクでの締め付けに便利で、締め付けを完了するとカチッという音と共にヘッドの角度が変わるので、すぐに分かります。
トルク設定範囲が40~200N・mとかなり広く、トルク調整の目盛りは色付きで見やすくなっています。柄の長さも十分にあるので、力のいるボルト締めも難しくありません。
ソケットは3種類のサイズと延長用のディープソケットがついています。この一本でホイールナットの装着やサスペンション取り付けと、かなりの作業をこなせるでしょう。
4位 SK11 デジタルトルクレンチ 差込角 9.5mm 3~60N・m SDT3-060
サイズ:全長225mm 差し込み角9.5mm
重量:480g
トルク測定範囲(N・m):3~60
音と光によるトルク管理で初心者でも使いやすい
設定トルクに到達するとブザー音とLED光で知らせてくれる機能を持っています。電源が単4乾電池2本なので、電池切れになってもすぐ交換可能です。
トルク設定範囲は60N・mまでなので、自転車やバイク、小型機器の整備用にピッタリです。トルク換算機能が付いているので、海外製造のパーツを使う時にも困りません。使わない時には付属の頑丈なハードケースにしまっておけば、故障の心配を減らせます。
5位エマーソン ニューレイトン デジタルトルクレンチ EM-243
サイズ:全長465mm 差し込み角12.7mm
重量:2,300g
トルク測定範囲(N・m):40~200
セット内容:トルクレンチ本体、14mm・17mm・19mm・24mmソケット、21mm薄口ロングソケット、エクステンション、電池交換工具
分かりやすいデジタル表示と最大トルクの高さが魅力
使いやすいデジタル形で、セット内容が豪華な製品です。ソケットは5種類で、延長部品であるエクステンションもついています。
トルク設定範囲が40~200N・mなので、幅広い用途に利用できます。それでいて価格は安めに抑えられているのが人気の理由です。
6位 KTC(ケーテーシー) デジタルトルクレンチ デジラチェ GEK135-R4
サイズ:全長380mm 差し込み角12.7mm
重量:700g
トルク測定範囲(N・m):27~135
設定トルクに近づくと音でお知らせ
精密な測定に役立つデジタル形のトルクレンチで、豊富な機能を備えています。機能は計測モード・プレセットモード・合否判定モードの他に、測定値の表示も3種類に切り替え可能です。
トルク範囲27~135N・mであれば、乗用車のホイールナットも適正に締められます。価格は高めですが、複雑な操作や習熟が不要で、扱いやすい製品です。
7位 3/8(9.5mm) ニードル(針)式トルクレンチ 0~90Nm WHSYH0113
サイズ:全長420mm 差し込み角9.5mm
重量:400g
トルク表示範囲(N・m):0~90
測定幅が広い熟練者向きのトルクレンチ
精密な測定が可能でありながら、構造がシンプルなので、初心者でも扱いやすい製品です。0~90N・mのトルク範囲では、自転車のホイールナットや、自動車の内部機関のボルトなどに利用できます。
慣れるにはコツがいるものの、使いこなせればコストパフォーマンス抜群です。
8位トーニチ ダイヤル型トルクレンチ 置針付 1.0~12.0N・m DB12N4S
サイズ:全長205mm 差し込み角6.35mm
重量:400g
トルク設定範囲(N・m):1.0~12.0
見やすい目盛りと置針で正確にトルク調整できる
正確にトルク値を測定できる、ダイヤル形のトルクレンチです。ダイヤル目盛を回転させられるので、設定したいトルク値に指針を置いて0になるまで締める使い方もできます。置針もついているので、最大トルクを調べる際に便利です。
トルクの設定範囲が小さいので、かなり小型のボルトを締め付けるケースで用いられます。やや高めな価格が難点ですが、精密なトルク測定を行いたい方には一考の価値があるでしょう。
9位トネ(TONE) スパナ形単能トルクレンチ TSP38-22 38N・m
サイズ:全長230mm / 開口部 外幅46.5mm × 内幅22mm × 厚さ8.5mm
重量:410g
トルク能力:38N・m
冷媒配管のボルト締めにピッタリ
エアコンのフレア管継手やフレアナットなど、ソケットを接続して使用するタイプのトルクレンチでは締められない場合に重宝します。安心の校正証明書付きです。
ただし、ソケット交換ができないのでサイズの合わないボルトには使用できません。トルクも固定されているので、特定の使い道でのみ力を発揮する製品です。
EM-29 エマーソン トルクレンチ ニ…… 3,295円 マルチクラフト(MULTICRAFT) トル…… 3,717円 E-Value プレセット型トルクレンチ…… 2,974円 SK11 デジタルトルクレンチ 差込角…… 9,980円 エマーソン ニューレイトン デジタ…… 8,685円 KTC(ケーテーシー) デジタルトルク…… 22,392円 3/8(9.5mm) ニードル(針)式ト…… 1,760円 トーニチ ダイヤル型トルクレンチ …… 11,305円 トネ(TONE) スパナ形単能トルクレ…… 5,032円おすすめの商品一覧
製品 最安値 評価 リンク 4.41 4.52 4.45 4.48 4.39 3.99 4 4.5 2.97
使用方法や、回転方向に気をつけて使う
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トルクレンチは測定器具とも呼ばれるほど、内部の構造と締め付けの精密性に特徴があります。間違った使い方をしてトルクレンチを壊してしまわないように気を付けましょう。以下に代表的な3つの注意点を挙げていきます。
まず、トルクレンチでのダブルチェックはしないでください。カチッと音がした後で再確認のためにボルトを締めようとすると、僅かに締めすぎとなってしまいます。どうしても再確認したい場合には、一度他のレンチを使ってボルトを緩めてから、再度トルクレンチで締め直しましょう。
2つ目は、トルクレンチの持ち方をしっかり覚えましょう。トルクレンチは回転させる軸から力をかける場所までの距離により、かかるトルクが微妙に変わってしまいます。製品によって基準点のマークがついていたり、グリップの中心を握るように指示されていたりするので、正しく持つことが大切です。
3つ目は、回転方向を間違えないことです。トルクレンチはボルトを締める用途にしか使えず、大抵は右回し(時計回り)専用になっています。右左どちらにも回せる製品もありますが、この場合も締めるためだけに使えます。もしボルトを緩めようと逆回転させてしまうと、トルクレンチ内部の破損につながる可能性もあるので注意してください。
保管方法にも細心の注意を
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トルクレンチを使った後は、正しく保管しましょう。保管方法が雑だと、トルクの設定や測定の精度が下がり、トルクレンチの使用目的を果たせません。
使い終わったらトルク値を設定できる一番低い数値まで戻してください。一般的なシグナル式プリセット形のトルクレンチは、内部のスプリングを圧縮させることでトルク値を設定する仕組みです。使った時のままで置いておくとスプリングが狂い、精度が下がる可能性があります。
保管場所にも気を遣う必要があります。トルクレンチは金属部品が多く、直読式デジタル形では電子部品も使われています。湿気は錆びや電気系統の故障、直射日光などによる高温は金属の劣化を招き、ほこりは部品内部に入りこんで精度を下げてしまう原因です。保管する場合には高温にならず、乾燥していて、ほこりの少ない場所を選びましょう。
まとめ
トルクレンチは適切なトルクをかけてボルトを締めていることが分かる工具です。使用方法には注意が必要ですが、慣れてしまえば自分で自動車や小型機械の整備ができるようになります。
決められた範囲でトルクを締めていきたいのならシグナル式がおすすめです。とくにプリセット形のトルクレンチは数多く販売されていて、簡単な操作とソケット切換で幅広い作業をこなせます。より精密にトルクを計りたい作業であれば直読式を選びましょう。デジタル形は初心者でも扱いやすく、便利な機能がついています。
精密にトルクを設定・測定できるのがトルクレンチの強みですから故障は大敵です。正しく使用して、保管方法にも気をつけるようにしてください。